ご父兄のみなさまへ

 最近の子供達を見ていると、何かに過度に怯え絶えず言い訳をしていたり、評論家のごとく訳知り顔をして必死に自分を強く見せようとしていたり、また逆に、感情を閉じ込め表情を失い傍観者のごとくいつも一歩引いていたり…そんな息苦しそうな子供達が学力の高低に関係なく年々増えてきていることが気になります。彼らの多くに共通するのは、自分で主体的に考え行動していくことができず、冒険心や自立心が弱く他者への依存心が強い一方で、自分の都合や感情ばかりに振り回され他者の存在や他者との協調を大切にできない自己中心的な姿勢です。つまり、子供達の“生きていく力”が弱まっているということです。

 しかしそれは、決して子供達に責任があるのではなく、子供達に無分別に物を与え、また大人の要求や都合通りに生きることを強いてきた家庭や社会にこそ責任があるはずです。欲しがる物は我慢させることなくすぐに買い与え(または一方的に拒み)、ちょっとでも雨が降れば車で送り迎えし、親が勝手に敷いたレールの上を走らせようとする−そんな過保護や過干渉な環境で育てられる子供がいるとすれば、大学受験を乗り切ることはもちろん、その子の将来にも日本の将来にも不安を感じずにはいられないのは私だけでしょうか。

 この受験界にも、自分の都合に合わせて勉強できるコンピューター教材・DVD教材・個別指導などが流行っています。もちろん、それぞれに良さはあり、学樹舎でも授業の復習用にとり入れているものもありますが、果たしてそうした表面的なシステムだけで子供の力を本当に伸ばすことができるのか、むしろ子供を甘やかしてわがままにしてしまうのではないか、疑問をぬぐいきれません。何よりこの私自身、某予備校の通信衛星による全国放送のビデオ授業を数年間に渡って担当してきて、その限界と矛盾を痛感した次第です。

 “教育の基盤は人間環境にある!!”−これが学樹舎創設の原点です。物質に満たされるだけでは人間はむしろ成長しません。自分と真剣に向き合い切磋琢磨していく環境は、人間の力でしか生み出せないものだと思うのです。時に優しく、時には厳しく、本気で見守り応援してくれる先生や仲間がいる、心から信頼しあいぶつかり合うことのできる先生や仲間がいる、つらく挫折しそうな時も励まし合える先生や仲間がいる、夢や目標を内面からかき立て描かせてくれる先生や仲間がいる−そんな安心と刺激の交錯する環境の中にいてこそ、人間は真に成長していくことができるのではないでしょうか。

 しかしまた、そのような環境を創るには、自分をきちんと持ったオトナ−自分の弱さにまっすぐに向き合える強さを持ったオトナが必要です。自らが抱える不安にもがき苦しみながら、自分の弱さにも目を反らさずに正面から向き合い、それを消化&吸収して自分の力に変えていけるオトナ、つまり、自分の歩幅(自己発見)を持って自分の生き方生かし方 =“夢”を模索(自己実現)していけるオトナでなければ、子供達の弱さを包みながら、子供達が等身大のまま成長していくのを見守ってあげることはできません。「そんな人間が集まり、力を合わせる空間を創りたい!」こうして学樹舎は誕生したのです。

 もちろん、私たち自身まだまだ成長段階にあり、未熟な点も多々あるかと思います。当校に対する御質問、子供達の健やかな成長を願う御意見・御提案等ございましたら、何なりとお聞かせください。皆様の声を大切に、生徒達と共に成長しながら、地域に貢献していきたいと思っております。

学樹舎長  菊 地 大 朗