学樹舎「休校」のお知らせ


2012年3月11日

 学樹舎の塾生・卒業生とご父兄、及び関係者の皆様へ



 学樹舎の塾生・卒業生とそのご父兄、及び学樹舎と関わってきてくださったすべての皆様へ、舎長の菊地大烽ゥらお知らせとお詫びを申し上げます。

 ちょうど1年前の東日本大震災と福島第1原発事故以来、いわき及び近隣に住まれる皆様は計り知れない苦労を重ね、今なお困難と向き合われていることと思います。あらためて心よりお見舞い申し上げます。



 学樹舎もこの1年、試練と喜怒哀楽の連続でした。

 原発事故後の最初の1ヶ月は、いわきから避難した7割近くの生徒と、ゴーストタウンと化したいわきに残る生徒の安否を気にしながら、情報収集とみんなへの伝達の日々が続きました。(みんな無事で本当によかった!! でも浪江・双葉・大熊・富岡・楢葉・広野地域の出身で今なお帰宅できないでいる生徒や卒業生とそのご家族が何人もいるのは、心が痛むばかりです。第1原発で働いていて大量被爆したお父様を持つ卒業生は、心配が絶えないことでしょう)

 幼い息子を抱える僕自身の家族や、妊婦であった義理の妹家族を放射線から守るため、栃木県へ避難。(原発への不安と、事故現場で危険な作業をしてくれている方々への感謝と、情報隠蔽への怒りと、家族が一緒にいられることの喜びと、毎日が喜怒哀楽の連続でした)

 いわきへの支援物資の運搬や、地震で足の踏み場もなくなった学樹舎の片付けと新年度準備のため、避難先といわきの往復。(ガソリンの確保が大変だった...)

 4月末にやっとのことで新年度開講!(喜)

 でも、毎年入塾者の大半が集中する春に、原発事故の影響で新規入塾者がほんの数名。生徒数は例年の半数以下。休校となっていた3〜4月の家賃の支払いにも追われ、3教室から2教室に減。(苦)

 「教科指導力はもちろん人間力にも優れた先生との出逢いから、生徒がよい刺激をたくさん受けられる」という学樹舎の基本方針のもと、遠く仙台などから何人もの素敵な先生にいわきまで来て頂いていましたが、原発事故によりJR常磐線は復旧のめども立たず、先生方の移動が時間的にも費用面でも困難な状況が続きました。(それでもいわきまで通い続けてくださった先生方には感謝あるのみです)

 また、こうした学樹舎の状況を察して、予備校界でもかなりの実力のある先生方が何人も、ボランティアでわざわざ学樹舎まで出講してくださりました。(感激)

 7年前の冬に脳出血に倒れ、リハビリに励み続けてきた古典の後藤先生も、学樹舎に元気な姿を見せに来てくれました!(涙)

 塾生・卒業生・ご父兄・先生方・昔の予備校での教え子や知人など、他にも様々な人が、様々な支援の手を差し伸べてくれました。学樹舎の片付けを手伝ってくれた人、避難・給水所・ガソリンや放射線などに関する有益な情報を提供してくれた人、激励のメッセージやユーモアあふれる言葉を送ってくれた人、復興に向けてのボランティア活動に参加してくれた人などなど...(人は支え合って生きていることを何度も実感!)

 4月末の再開以来、80名を超える卒業生が心配して学樹舎を訪ねてくれました。この半月の間にも、東京などから日帰りでわざわざ訪ねて来てくれる卒業生が絶えません。塾生への差し入れも、例年の5倍くらいいただき、お菓子が溢れました。(嬉)

 そして学樹舎の生徒達は、震災や原発事故の被害や困難を物ともせず、以前と変わらない純真な心で、勉強とそして自分自身と向き合い頑張ってきました。受験生も最後まで粘り強く戦い抜いてくれました!(逞)



 高校生が通い易いようにいわき駅近くに高額なテナントを賃借しながら、「遠方からでも、指導力と人間力を備えた素敵な先生に来て頂く」という学樹舎の基本体制が原発事故により崩れかけるなか、生徒達の純真な心と、多くの方々からいただく支援や激励が、ずっと僕の支えとなってきました。どんなに感謝してもしきれません。何とか生徒達のために、卒業生のために、いわきの子供達のために、学樹舎を維持していけないか。学樹舎をさらに工夫・改革していけないか。考え続ける1年でもありました。

 しかしながら、様々な問題・事情が絡み、現在の体制で学樹舎を維持・運営していくことは不可能であるとの結論に至りました。誠に申し訳ありませんが、本日2012年3月11日から学樹舎を休校とし、僕は家族と共に故郷の長野県に移住することに決めました。苦渋の決断です。

 塾生をはじめ、学樹舎に関わるすべての皆様に多大なご迷惑をおかけすることになるかと思います。特に高1&2生には期待に応えてあげることができず、本当にごめんなさい。心よりお詫び申し上げます。



 たまたま人との縁からいわきを訪ね、たまたま駅近くに建築中のテナントを見つけ、ふと自分の理想とする学び舎を創ってみたくなり、1995年の春に開校した学樹舎。先生方、生徒、ご父兄をはじめ大変多くの方々に支えられ、今日まで成長することができました。お陰様で創立から17年、700名を超す生徒達が逞しく巣立っていきました。

 僕は予備校講師として、様々な地域で数万人の生徒達と出逢ってきましたが、飾ることのない率直な姿勢、素直な心をもついわきの子供達が大好きです。予備校で一方的に教えている時には気づかなかった大切なことを、学樹舎の生徒達から日々たくさん教えられました。純真な心、澄んだ瞳に、何度も勇気づけられ、何度も自己を反省しました。

 学樹舎に通ってきてくれたすべての生徒に心から感謝しています。そして、今もこれからも、心から愛しています。本当にありがとう。

 僕は新年度から長野県に移り、仕事もゼロから築き直していくことになります。僕を育ててくれた故郷に恩返しができるよう、長野県の子供達が学力と人間力を伸ばしていける基盤作りをしていきます。



 僕の47年に渡る人生のうち、高校卒業までの約19年を長野県で過ごしました。そして、その次に長く過ごした場所が、17年に渡るいわきです。(残りの11年は首都圏です)僕にとっていわき(福島県)は、長野県と変わらない大切な故郷です!妻と息子の故郷でもあります。だから、長野県に行っても、いわきのことは忘れませんし、遠方からできる復興への支援を見つけていきたいと思っています。毎年、いわきにある妻の実家へも帰省します。もしかしたら、いつの日かいわきに戻って来られる日が来るかもしれません。なので、学樹舎を「閉校」ではなく「休校」とさせて頂きます。

 塾生・卒業生の皆さんに会える機会は減ってしまいますが、学樹舎のHPは存続させますので、近況などたまに書き込んでもらえると嬉しいです。いつまでもみんなと繋がり、いつまでもみんなを見守り応援していきます。



 最後に、もう一度...

 「みなさん、心からごめんなさい。

  そして、心からありがとう」



学樹舎長  菊 地 大 朗